今月の断片 2022-08

 

 ずっとテレワークが続いていたのだが、進捗がヤバすぎる、という理由で急遽出社になった。本気モードとしての出社。
 久々に朝の電車に乗ると、座席に横になって大胆に眠っている女性がいて、みんな少し避けて乗っていた。しばらくして、車内で大きな音がしたので見ると、さっきの眠っていた女性が床に転がっている。寝返りを打って座席から落ちたのだ。この事件にも関わらず、朝の車内は不思議と静かなままで、少し離れた場所に座っている私からは彼女が誰かに介抱されているのか、それとも全員に放置されているのか分からなかったが、次の駅に到着すると「急病人対応のため停車します」とアナウンスがあって、誰かが駅員に連絡をしたらしいと分かった。私は、あまりジロジロ見るのも悪いからと自分に言い訳をして、座ったまま目を伏せていた。
 電車が再び動き出すまであまり時間はかからなかった。あの女性はどうなったのだろう。もし車外に運ばれたのなら、朝の交通を円滑に回すため、その流れから排除されたということか。都市という巨大なシステムのデバッグ、些細なエラーとしての個人……などと考えていると終点に着いた。降りる間際に目をやると、なんと当の本人は堂々と足を組んで座り直し、また眠っていたのだった。

 

 

 今月は調子が悪かったので短め。