今月の断片 2024-02

 

 ずっと歩いてここまで来たんです、と指差す方向を見ると道は長く続いていて、山の向こうに隠れたその先を見ることはできない。途中でいろんなことがありました、とその人は言う。いろんな人と会って、いろんな景色を見ました。僕はそれを聞くだけで、本当の意味では知ることができない。

 

 今年、25才になってようやく、眼鏡からコンタクトに変えた。同じ時期にパーマもかけたので人相が大きく変わったらしく、知り合いに会って話しかけるたびにキョトンとされるのが面白い。決まって、一瞬誰だかわからなかった、と言われる。
 今さらコンタクトにした理由を聞かれてその度に回答に困るが、たぶん自分を変えたかったんだろう。自分自身への失望に対するささやかな抵抗でもある。
 もっと変えておしゃれになろうかな、と思って下北沢の古着屋に行ってみたが、圧倒的な物量と人混みに目が回るだけで何も分からなかった。一つも買わずに諦めて、そのまま駒場東大前まで歩きカツカレーを食べた。これまで何も克服できていないような気がする。でも、この方がいい。古着よりカツカレーの方が話が通じる。