今月の断片 2023-01

 

 実家を出ることにした。高校の友人でルームシェアをしている2人がいて、そのうち1人が職場の近くに越すというので、代わりに入ることにしたのだ。半年くらい前から話は出ていて、両親にも承諾を得ていた。まだまだ先のことだと思っていたら、いつのまにか今月末に迫っており、この文章が読まれている頃にはすでに新居での生活を始めているはずだ。
 話が決まって以来、母は生活の細々としたことを教えてくれるようになった。この料理は簡単だからやってみると良いとか、キッチンのこの場所は汚れるからシートを貼った方が良いとか、色々言っていた。早くもほとんど忘れてしまっているので、メモを取っておくべきだった。思えばこれまでの生活は全く両親に頼りきりで、僕自身の生活能力はほとんど皆無なのである。割と楽観しているが、心配ではある。
 そういえば、年が明けてすぐ、近所の神社で初詣をしておみくじを引いたのだが、運勢は小吉で、読むと「物ごとひかえめにし心正しく身をまもってあまり進んでしない方がよい」とのことだった。今年のおみくじとしては微妙な結果だ。進んでしない方がよいと言われても、自立して暮らしていくために必要なあれこれを進んでやっていきたいと思っている。必要なことだけでなく楽しみも見つけたいし、好きなことは諦めずに続けたいから、ひかえめにはできない。
 その小さな神社ではおみくじ箱も質素で、管理所の前の机に小さく箱が置かれているだけだった。近づくとお爺さんが窓から顔を出し、僕が百円を入れておみくじを引くのを見るとなにも言わずにまた引っ込んだ。なんとなく「RPG」という言葉が浮かんだ。