今月の断片 2023-02

 

 変わらないね、と言われる。同窓会やそれに類するような場で数年ぶりに再会した旧友たちが決まってそう口にするので、本当にそうなんだろうなと思う。周囲では、あの子すっかり大人になったねとか、一瞬誰だか分からなかった、なんて声が囁かれるので、僕も見違えるほどの変貌をしてみたいと思うが、必ず、そしてなぜだかしみじみと、変わらないねぇと言われるのだ。元々落ち着いた性格でそれが今も変わらないからかも知れないが、別にそうなりたくてなった訳ではないし、なんだか自分だけがどこにも進んでいないような気持ちになる。しかし、変わらないねと実感を込めて言われる中には安心も含まれているようで、それはそれで良いことのような気もしてなんだか複雑である。そんな僕も少しずつは変わっているはずなのだから、いつか変わったねと言われることがあるのだろうか。言われたとして、それは良い意味なんだろうか。

 

 先月末、実家を出たのだった。引っ越してからの2週間はまるで修学旅行の気分で、歯を磨くのもウキウキという様相だったが、ある時ふと、寂しさと虚しさに襲われて、あー、いま初めて非日常が日常になったな、と思った。新居に慣れるというのは、生活のサイクルが整うことでも、新しいベッドで眠れるようになることでもなく、顔馴染みの暗い感情がやってくることなのだ。
 一番心配していたのは自炊だったが、思いのほかなんとかなるものである。昼食は同居人が作ってくれるし、夕飯もその日その日で買い物に行って欲望のままに食べたいものを食べている。そのうち、まとめ買いしてその中で作れるようになるのかしら。
 この町では、平日の14:30と毎日16:30にチャイムが鳴る。季節によって変わるのかどうかはまだ知らない。