今月の断片 2023-01

 

 実家を出ることにした。高校の友人でルームシェアをしている2人がいて、そのうち1人が職場の近くに越すというので、代わりに入ることにしたのだ。半年くらい前から話は出ていて、両親にも承諾を得ていた。まだまだ先のことだと思っていたら、いつのまにか今月末に迫っており、この文章が読まれている頃にはすでに新居での生活を始めているはずだ。
 話が決まって以来、母は生活の細々としたことを教えてくれるようになった。この料理は簡単だからやってみると良いとか、キッチンのこの場所は汚れるからシートを貼った方が良いとか、色々言っていた。早くもほとんど忘れてしまっているので、メモを取っておくべきだった。思えばこれまでの生活は全く両親に頼りきりで、僕自身の生活能力はほとんど皆無なのである。割と楽観しているが、心配ではある。
 そういえば、年が明けてすぐ、近所の神社で初詣をしておみくじを引いたのだが、運勢は小吉で、読むと「物ごとひかえめにし心正しく身をまもってあまり進んでしない方がよい」とのことだった。今年のおみくじとしては微妙な結果だ。進んでしない方がよいと言われても、自立して暮らしていくために必要なあれこれを進んでやっていきたいと思っている。必要なことだけでなく楽しみも見つけたいし、好きなことは諦めずに続けたいから、ひかえめにはできない。
 その小さな神社ではおみくじ箱も質素で、管理所の前の机に小さく箱が置かれているだけだった。近づくとお爺さんが窓から顔を出し、僕が百円を入れておみくじを引くのを見るとなにも言わずにまた引っ込んだ。なんとなく「RPG」という言葉が浮かんだ。

 

今月の断片 2022-12

 

 好きな人のことをたくさん考えた1年だった。もう、あまり読んでいる人もいないし書いちゃうけど、考えすぎてちょっと病んだ。
 もともとすぐに人を好きになるタイプで、しかも好きになるとすぐ告白してしまう。相手にどう思われているかは深く考えないまま実行に移すのもあり、13才から今までの10年間で7人に告白し6人にフラれている。自分でも、これはちょっと多いなと思う。どうかしている。今好きな人にも昨年すでにフラれていて、片想いが続いている。
 告白なんてしなければよかったと後悔ばかりしていたら、それを発端に人生の全てが失敗だったように思われ始めたのが今年の春頃である。そこまでくると、もう恋愛とは関係のない回路が働いていて、仕事や生活の自信を失い、自分を嫌うようになった。これまで生きてきたことを受け入れがたく感じるのはとてもみじめで、まるで永遠に続く下り坂を滑り落ちていくような、錨を抱えたまま海の底に沈んでいくような感じだった。見るもの全て灰色に感じられ、このまま死ぬのかも、とさえ思った。
 転機が訪れたのは9月のことである。好きな人と連絡を取る機会があって、そのまましばらくLINEが続いた。
 全快した。
 我ながら呆れる。なんなんだ本当に。あれだけ人生を憂いておいて結局それかい。中学生みたいな恋愛しやがって。
 そんなわけで、落ち着いた大人になれないまま、ぐるぐると同じところを歩きながら、年を越すことになりそうです。

 みなさん良いお年をお迎えください。

 

今月の断片 2022-11

 

11月3日(木) 晴れ

 祝日。明日は有給を取ったので4連休の初日だ。
 やるべきことに手がつかず家の中で腐りそうだったので、双子を誘って吉祥寺に出かけた。井の頭公園を歩いて、薬局と本屋で買い物。ついてきた双子の相方は最後まで何も買わずに、急遽恋人に会えることになったからとそそくさ立ち去っていったので、結局ただ付き合わせた形になっちゃったな。でも1人だと出かける思い切りがつかなかったし、誘ったらついて来てくれるというのはありがたい限りだ。
 帰った後はスプラトゥーンをやって今日はおしまい。やらなきゃいけないことがずっとやれてない。

 

11月4日(金) 晴れ

 観劇のため名古屋まで遠征。完全に浮かれた旅行気分で、東京駅の高い海鮮弁当を買って新幹線で食べた。かに・いくら・焼ホタテ弁当。名古屋関係ないな。でも最高の心地だ。
 食べ終わってから、大事なノートを家に置いてきたことに気づく。これではやるべきこともできないや……と言い訳をして、のんびり外の景色を見て過ごした。山、トンネル、知らない街のデニーズ。途中で少し眠った。
 名古屋で友人たちと合流して観劇。別にこういう形もありだよねと話したけど、やっぱり変な旅だなと思う。

 

11月5日(土) 晴れ

 名古屋2日目。友人たちは日帰りだったり早めの新幹線だったりして、午後から1人で豊田市美術館に向かった。
 栄から豊田市までの所要時間は60分未満なのだけど、名古屋の地下鉄に不慣れだったので何度も乗り間違え、なんやかんや90分以上かかってしまった。見知らぬ土地だと、アナウンスや表示から断片的に入ってくる情報が全然判断の材料にならないというか、例えば山手線で言えば、新宿の次が代々木だからこのまま行けば渋谷に着くな、みたいな、普段あまり意識せずに行なっている判断や間違いの検出ができない。知らん駅から知らん駅に向かう電車だなぁ、と思って乗り込むと真逆に進んでいることもあるし、それに気がつくのも遅くなる。
 と書いてみて思ったけど、普段はほとんど同じ路線しか使わないし、旅先くらいもっと意識的に確認すべきなんだよな。俺ってもしかして自分が思ってるよりちゃんとしてないのか?
 電車を間違えつつなんとかたどり着いた豊田市美術館をウロウロ。東京で見逃したゲルハルト・リヒター展を見れて良かったし、それ以上に、3年前に1人で訪れたルートを再び辿れたのが良かった。ここらへんで少し迷った気がする、みたいな、おぼろげで確かめようのない記憶を遡るような時間だった。名鉄豊田線から見える景色は印象に残っていたのでよく覚えていた。あの時は1人で3泊4日の行程を終え、これから東京に帰るんだ……と思いながら夕暮れの街並みを見ていた。
 新幹線で東京に帰る。明日も休みで嬉しい。

 

11月8日(火) 晴れ

 仕事。目が画面になる。

 

11月12日(土) 晴れ

 昨夜は仕事終わりにMELT#2の打ち上げ。今回クリエーションには全く関わらず事務的な手伝いだけしていたのだが、ちゃっかり朝まで楽しんでしまった。話したかった人とも話せてよかった。
 利用したレンタルスペースにはボードゲームやカードゲームがたくさん用意されていて、夜中に「ウミガメのスープ」をやった。言わずと知れた推理ゲームだけど、正直ナメてたな。あれめちゃくちゃ面白いんすね。回答者として正解を導き出した時の気持ちよさはもちろん、出題者は質問にYES/NOで答えながら回答者の歩みを俯瞰して楽しめるのがいいなと思った。最初は関係ない場所をウロウロしているのが、ある時急に接近してくる様子を上から見る感じというか。
 始発で帰って、今日は来年の企画の劇場下見。夕方からは観劇。そんな日の朝までオールすな。

 

11月13日(日) 曇りときどき雨

 友人のイベントで劇場受付の手伝い。帰りに甘いものが飲みたくなったので、駅のホームの自動販売機で伊藤園の「東日本果汁ミックス」なるものを買った。りんご、洋梨、葡萄、さくらんぼの4種類が入っている割に果汁10%未満と低めの含有量で、ぼんやりとした味がした。あとはひたすらに甘い。そう、こういうのが飲みたかったんだよ。

 

11月17日(木) 曇り

 仕事をしていると肩が凝る。身体のいろんなところが煮詰まっているような感覚になる。頭が痛くて辛いので、体操やらマッサージやらを試すそのついでに、思い出したように筋トレをする。こういうことがよくある。
 筋トレと言っても僕がやるのはスクワットだけだ。スクワットは太ももの筋肉だけでなく腹筋や背筋にも効くらしく、じゃあそれだけやっときゃいいじゃんという怠惰な心からスクワットのみやっている。怠惰なので続かないし、やったとしても正しく出来ている気がしない。
 そういえば、スクワットをやり始める以前は、なかやまきんにくんYouTubeで「世界一楽な筋トレ」動画を見て実践していたこともあった。あの頃は毎日きんにくんの顔を見ていた。最近は見ていない。

 

11月27日(日) 晴れ

 昨夜は友人のバーイベントへ。参加は4回目だったがやはり居心地の良い空間で、挨拶はしたことあったけどちゃんと話したことはなかったような人とも話せて嬉しかった。しかし、後輩だらけの空間で素直に居心地の良さを感じてるのってちょっとヤバいな。そこにある傾斜とか気を遣われていることに自覚がない可能性が高いので。気をつけよ。これはマジの反省。
 今日は予定がなくなって暇。KAATで今日までやっている上演が面白いらしいと聞いて行くか迷ったのだけど、うーん、まぁ行けなくはない、でもちょっと、ちょっと遠い……のでパスした。こういうのは基本行った方が良いと分かっているが、元来、土日休みの片方出かけたら、もう片方は家で休みたい性分なのだ。外の世界での出来事をまたひとつ見逃しながら、一回休み。

 

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双子に通じなかったあるある

今月の断片 2022-10

 

 調子が悪いので短め。

 

 最近気がついたけど、忙しい状態を体感的に表すと、僕は「調子が悪い」になる。普通は体調とか思考のキレ、つまりは内的な問題を表すのだが、僕はなぜか、外的な問題にもこの言い回しをしてしまう。というか恐らく、ここの区別があまりついていない。仕事が忙しいせいで何に対しても十分な時間の確保や思考ができない場合でも、その事実にあまり自覚的でなく、なんか調子悪いなーと思ってしまう。原因は体調ではなく残業と休日出勤なのだ(先月ひと段落ついたと思ったのにまた追い込まれてしまった)。
 でも思ったけど、いま別々のこととして書いた外部と内部って、実際には結びついているのかもな。休む時間が少ないから体調が悪くなっているというのはありそうな話だし。ただ、自由な時間が足りないことに後から気づく感じなんだよな。あー、なんだかこのままだと話が堂々巡りになってしまいそうだ。やっぱり調子が悪い。

 

 一方で、メンタルの調子が実は良い。今年の春から夏にかけて気持ちが沈み続けて、一時期はどん底を味わったが、先月に入って劇的に回復した。急浮上の原因ははっきりしているのだけど、あまりにも単純な理由なので、秘密ということにしておく。

 

 全然関係ない話だけれど、今月のとある週末、双子で『ゴッドファーザー』を観に下高井戸に出かけた。以前から観てみたいねと話していた作品なので、上映の情報を見かけて一緒に行くことにしたのだ。
 観る前に、近くの中料理屋で昼食をとったのだが、双子で同じ注文をしたのに中華スープが一つしか運ばれてこなかった。休日のお昼どき、厨房もフロアもてんやわんやといった様子である。こうゆう時、忙しそうな店員に声をかけ、手間を増やすという選択肢は僕にはない。相方も同じ発想らしく、自然と双子でスープを分け合って飲んだ。特に言葉も交わさないままそうなったのが良かった。
 後日、双子でLINEをしていると、相方が脈略もなく「なんでスープひとつしかなかったんだ」と言い始め、そのまま「仲良しだと思われたからか」と納得していた。この人と双子で良かった。

 

 

今月の断片 2022-09

 

9月3日(土) 晴れ

 仕事がヤバすぎるので休日出勤。ここのところ、ずっとてんてこ舞いだ。
 観劇の予定があったので、夕方ごろ仕事を中断して外出。この1週間くらいで突然涼しくなって、過ごしやすい気候が続いている。ちょうどいいな〜。鈴虫なんか鳴いちゃってさ、まるで世界は全て穏やかで争い事なんかないみたいだ。
 観劇後、ストレス解消のためソロ回転寿司。皿を重ねるたびに何かが解放されていくのを感じる。抑圧されていた欲求が注文のタブレットにぶつけられる。最終的に、12皿の寿司と茶碗蒸しを食べた。いや言った割に普通の量かい。
 帰ってからまた仕事を進めようかと思っていたが、寿司を食べるために遠回りをしたため、ずいぶん遅くなってしまった。そもそも劇場も埼玉だったし。頭も痛いし、今日はもう風呂入って寝よう。

 

9月4日(日) 晴れ

 日差しが強くて夏っぽい。今日も今日とて休日出勤と観劇。予定を入れていたおかげで辛うじて休日のテイを保てた感じだ。その分仕事は進まないが。
 ほかにも観ようと思っていた配信のアーカイブがあって期限も今日までだったのだが、そっちを観る暇はありそうにない。パンデミックをきっかけにオンライン配信が普及して久しいが、こういう「なんやかんや観れない」という個人的な傾向も含めて、やっぱりオンサイトで観るのがいいよなと思っている。
 帰宅後、22時まで仕事をしていると、恋人とのデートを終え休日を満喫した双子が帰ってくる。ただ落差の大きい時期なのだと理性的には分かっていても、本当に暗い気持ちになる。同じ遺伝子のはずなのに、どこで間違えたんだろうな……。

 

9月10日(土) 晴れ

 今日も休日出勤。明日も仕事。長〜い1週間が続いてるような気持ちだ。はやく本当の休日が欲しい。積んでる本読んでYouTube見たい。スプラトゥーン買って遊びたい。
 鼻がムズムズする。秋花粉の季節らしい。もう何年も花粉症持ちをやっているから、これはヤツだなとすぐに分かる。だからと言って花粉を許したわけではない。覚えていろ……。

 

9月12日(月) 晴れ

 残業中、毎日19時くらいに「所用のため離席します」とチャットを打ってから30分くらい仕事を離れる上司がいるんだけど、明らかに夜ご飯食べててかわいい。たくさん食べな。

 

9月13日(火) 晴れ

 肩こり防止に、立ったまま仕事ができるスタンディングデスク(正確にはスタンディングデスクにちょうどいい高さの棚)にパソコンとモニターをのせて使っている。この一年くらいこの形態を続けていてなんの問題もなかったのだが、今月休みなく働いていたら流石に脚が痛くなってきた。遅くまで残業して土日も働くと持たないな。
 もしかして、これまで良いと信じていたスタンディングだけど実は身体に良くなかったりするのか?と気になって"スタンディングデスク デメリット"で検索したら「脚が疲れる」と書かれていた。そりゃそうだ。

 

9月17日(土) 晴れ

 5時くらいに目が覚めた。普段だったら諦めずにアイマスクをしてもう一度寝るのだが、なんかもう無理だなと思って部屋の明かりをつけた。
 最後の休日出勤、のはず。今月に入ってから毎日働いているので、20連勤ということになる。観劇や飲みを挟んでいるから実質的には目減りするが、これまでの人生で一番働いたのは間違いない。
 それでも体感としては全然、ガストでバイトした時のキツさには遠く及ばないな。あれ本当に向いてなかった。ひとつ意味があるなら、それ以降の辛いことに対して「ガストのバイトに比べたらマシ」という耐え方を覚えたことだ。

 

9月18日(日) 雨

 仕事一区切りついた〜!うれしい。やっと休日には仕事をしなくていい生活が戻ってくる。
 すごい台風が九州の方に来ているらしい。東京も雨だったので今日は出かけられず、一日中家でMELTの制作作業をしていた。仕事の影響でぶっ続けで作業できる能力を手に入れてしまった。こんなの自分じゃない。本当は60%までしか頑張れないお気楽人間のはずなのに……。
 夜は家族でステーキ食べた。双子の相方がいないと家族と話せない。勝手に四面楚歌の気分。

 

9月19日(月) 雨ときどき曇り

 午前中、スプラトゥーン3。おもしれーのな。僕にとってのスプラトゥーンの衝撃とはその面白さだけではなく、これまで3年間続いていた双子スマブラが自然と幕を下ろしたことでもある。まぁ最近はほとんど惰性スマブラになっていて、会話のついでに画面上のキャラクターもなんとなく動かしているような状態だったから、終止符を打ついい機会ではあった。
 午後は来年の公演企画の打ち合わせ。オンラインでも良かったのだが、なんか対面でニュアンス掴めた方が良い気がして恵比寿に向かった。結果的にもかなり実りある話し合いだったので良かった。あー、もっと演劇に意識を割きたいよー、平日の仕事減らしてくれー。

 

9月23日(金) 曇り

 長袖のシャツに袖を通した。急に秋になったね、と母は言ったが、少し前に蝉は鳴き止んでいたし、過ごしやすい気候が続いていたし、確かに秋の色は濃くなっていたと思う。ただそのグラデーションの中にも閾値はあって、それが長袖を着るということなのだ。
 テレワークのお昼、同じく在宅の両親と近所のガストへ。元バイト先。チーズインハンバーグをパンに挟んだガストバーガーを食べたのだが、あまりにも頭の悪い味で笑ってしまった。ガストバーガーにも秋が来る。

 

9月26日(月) 晴れ

 3連休+代休で4連休だった。しっかり休めて良かったけど、読書するぞーと思ってた割に全然読めなかったな。これは時間がなかった訳ではなく、しばらく忙しくしている間に読書のための回路がすっかり錆びついてしまった感じで、読もうと思っても目が文字列を追いかけてくれなかったり頭が文章を処理できなかったりするのだ。やっぱり普段からコンスタントに読書ができる暇が欲しいな。演劇をやるほどの余裕はなくてもいいから。嘘、それも欲しい。
 連休最終日の今日は、双子の勤め先まで遊びに行ってお昼を一緒に食べた。仲良しだね〜。そのまま閉業間際の八重洲ブックセンターに寄って背表紙を見て回ったり、代官山に移動して映画を観たりした。ゴダールの『勝手にしやがれ』、他でやってないと思い込んでヘッドホン付きの変わったミニシアターで予約してしまったのだけど、渋谷で普通に上映してた。調べ直すと、追悼上映としてあちこちでやっているっぽい。

 

今月の断片 2022-08

 

 ずっとテレワークが続いていたのだが、進捗がヤバすぎる、という理由で急遽出社になった。本気モードとしての出社。
 久々に朝の電車に乗ると、座席に横になって大胆に眠っている女性がいて、みんな少し避けて乗っていた。しばらくして、車内で大きな音がしたので見ると、さっきの眠っていた女性が床に転がっている。寝返りを打って座席から落ちたのだ。この事件にも関わらず、朝の車内は不思議と静かなままで、少し離れた場所に座っている私からは彼女が誰かに介抱されているのか、それとも全員に放置されているのか分からなかったが、次の駅に到着すると「急病人対応のため停車します」とアナウンスがあって、誰かが駅員に連絡をしたらしいと分かった。私は、あまりジロジロ見るのも悪いからと自分に言い訳をして、座ったまま目を伏せていた。
 電車が再び動き出すまであまり時間はかからなかった。あの女性はどうなったのだろう。もし車外に運ばれたのなら、朝の交通を円滑に回すため、その流れから排除されたということか。都市という巨大なシステムのデバッグ、些細なエラーとしての個人……などと考えていると終点に着いた。降りる間際に目をやると、なんと当の本人は堂々と足を組んで座り直し、また眠っていたのだった。

 

 

 今月は調子が悪かったので短め。

今月の断片 2022-07

 

7月1日(金) 晴れ

 あまりにも世界が灰色なので、なにを楽しみに生きてるのかと双子に訊ねたところ、週末に彼女に会うことかな、と言われてしまった。とどめを刺そうとしている?
 もちろん幸福の形はひとつではないし、特定の価値観にとらわれる必要もないけれど、それと僕の寂しさとは別の問題だ。
 仕事終わり、かかりつけの皮膚科へ自転車を漕ぐ。ぬるい風。夏の夕暮れ。

 

7月2日(土) 晴れ

 高円寺の中華料理店に入る。注文した角煮を食べながら、そう言えば本格中華の味付けと脂身が苦手だったと思い出した。ダメだこりゃ。
 腹ごしらえの後、先月のMELT公演の振り返り会。まわそうPDCAサイクル。一公演丸々振り返るから当然フィードバック内容も大量で、数時間かかってしまいすごく疲れた。最後にピザ食べて酒飲んで終了。

 

7月3日(日) 雨

 観劇のため横浜の方まで遠出。ついでに赤レンガ倉庫の近くをトボトボと散歩した。海岸線でマスクを少し外してみると思ったより港臭い。その後、この辺りに来た時必ず行く中華料理店に入り、いつもより奮発して2,550円も使ってしまった。自分1人の外食で、1回にこんなに使ったことないかも。でも美味しかったから良し。上演も良くて満足して帰る。みなとみらい線

 

7月5日(火) 雨

 この前、ずっと話したかった人と久しぶりに話せる機会あったのに、話題に迷った結果「よく遅刻してるよね」って言っちゃったの後悔してる。最初に除外する選択肢だろそれは。

 

7月6日(水) 曇り

 夜、早稲田松竹フランソワ・トリュフォー華氏451』を観る。名画座を訪れるのは恥ずかしながら初めてだったのだけど、心なしか客層がマニアックな感じがして面白い。ぼく自身は、ついこの前再読した『海辺のカフカ』に監督の名前が出ていたので観に来ただけ。映画には疎いのだけど、良かったからもっといろいろ観たい。終わってからはなまるうどんでうどん食べて帰宅。

 

7月9日(土) 晴れ

 昨夜から今朝までMELTの打ち上げ。楽しくて久しぶりにはしゃいでしまった。稽古では喋らないのに打ち上げで急に喋るやつになってそうで怖いな。
 打ち上げは単に楽しいだけでなく、感情の精算という機能もある。公演は大変だし、こんなこと二度とやるか!と思うこともあるが、打ち上げで大入りを渡されたり、改めて挨拶をしていると、なんか結果的に良かったなという気持ちになる。
 事前にヘパリーゼを入れていたため、あんなに飲んだのに二日酔いになっていない。すごいぜ、へぱ。今日も高校の友人と飲む。たくさん飲む週末。

 

7月16日(土) 曇りときどき雨

 あの梅雨前線が、3Dになって帰ってきた〜〜〜!!(山寺宏一の声)梅雨"2"〜!!
 なーんもやる気せん。けど眉毛サロンを予約していたので、トコトコ新宿へ向かった。バリバリ眉毛を抜かれてウケる。スタッフさんと雑談しながら施術を受けていたら、突然「どんな人生を送ってきたんですかー?」と聞かれて笑っちゃった。一期一会を武器にした究極の質問だ。適当に話しているうちに施術が終わり、眉毛だけ整った人間として帰路に着く。

 

7月20日(水) 晴れ

 なんか、やるべきことのタイムラインが複数あるし、それぞれの量が多いな。もしかして"忙しい"のか……?
 意識における後悔の比重が春ごろからどんどん大きくなっていて、最近は1人の時間の半分くらいを後悔に使っている気がする。今この世界を生きているということが全然受け入れられない。つれ〜

 

7月23日(土) 晴れ

 三鷹に観劇に行くと、客席で大学の先輩Yさんと偶然の再会。ちょうど同じ日に共通の後輩のバーイベントがあったので、一緒に行くことにした。Yさんはアメリカに長く留学しているのもあって在学時に絡みが多かったわけではないのだけど、物腰柔らかでとても話しやすい。
 バーには後輩たちが集まっていて、代の違う僕らはそのまま2人で話していたのだけど、知っている後輩をYさんに紹介するうちに周りに馴染んだ。途中で帰ろうかなと言っていたYさんも結局クローズまでいて、楽しんでくれたようで良かった。皆で手を振って解散。良い日だった。

 

続く