今月の断片 2022-02

 

 言えることがあるとすれば単に何も言えないということであり、それは本来一般化して書くことすらできない。言葉が全て余計なものに思えるけれど、覚えてるよ、と言われると嬉しいし、懐かしいね、の響きが肋骨の真ん中に入り込んでくすぐる。愛着を覚える。最後に会ったのはいつだったろう。再会するときに持ち寄るつくりものの体は細胞が入れ替えられているから知らない人みたいだ。その輪郭と声だけを覚えている。黒い同窓会。あの人の分まで、なんて言い方はしたくない。ぼくはぼくの分しか生きられない。ぼくが見るものしか見られない。ぼくが聞くことしか聞けない。ぼくが会える人にしか会えない。ぼくはここで見てるよ。ここで見てる。