『二千拾九年を振り返って』

 元旦を雪山で迎えてから1年が経ちました。初日の出を見ようと、ロープウェイで山頂へ向ったまでは良かったのですが、そこは真っ白な視界の極寒地獄、吹雪吹き荒れる冬の中の冬、ウィンターオブウィンターでした。

「寒い寒い」

 凍える私を横目に、体内に溜め込んだマグマの力で動いている友人、ここでは、ペッパーくんと呼んでおきましょう、その人が、活発に動き回っていました。

「サッサ、サッサ」(動き回っている)

「帰ろう、ペッパーくん。このままでは皆死んでしまう。」

「キエェェーー」

 叫んだのは、これまた別の友人、ここではジャーマンポテトと呼んでおきましょう、その人でした。

「ウェ」

「あ、ジャーマンポテトが卵を産んだぞ」

「口から産卵するな、しかも雪山で」

 ジャーマンポテトは真顔でした。

 結局、我々は雪山を降りることにしました。しかし、下りのロープウェイは老人専用となっており、使えません。仕方なく、徒歩で降りることにしました。下山には3ヶ月ほどかかりました。その間に、私は一本の舞台を上演しました。その際左腕を失ったので、出演者を食べて再生しようと思ったのですが、人間は食べられませんでした(食べようとするとエラー画面が出るので)。仕方なく、私は双子の弟、ここでは狂いガンジーと呼んでおきましょう、彼が杖代わりにしていたチーズフォンデュの刺すやつを、腕として貰いました。夕方でした。狂いガンジーは分厚い本を椅子にしていました。

 後のことは、皆さんご存知の通りです。雪山を降りた僕らが温かいスープを飲んでいる頃、間違った核ミサイルのスイッチが押され、世界は滅びました。嘘だけが残りました。それが令和です。ゼロの総数という意味です。狂いガンジーはカナダに行きました。大きい滝を見たそうです。僕は家で、画面の中の僕を動かしていました。

 

来年は来ません。

良いお年をお迎えください。